夢を忘れた眠り姫
「本当に。彼の懐の深さに感謝です」

『ゆめちゃんの反省ぶりが伝わったんだろ。良かったな、心配事が一つ片付いて』

「はい」

『じゃ、更にテンションが上がる吉報を発表しようかなっと』

「え?」

『じいさん、やっと書類にサインしたよ』


それを聞いて『ああ……』と思う。


『あの話もちゃんと白紙に戻したようだ』

「……知ってます」

『へ?』

「貴志さんのお母さんがマンションに来て、その件についてぼやいていましたから」


ベンさんには、貴志さんが母親から見合いを強要されていること、しかもその相手は…ということを報告してある。


『ありゃりゃ、おっかさん、そこに突撃したのか』

「ええ」

『俺の警告ガン無視かよ。困った人だ』

「でも、多分もう押し掛けては来ないと思いますので、今回の件は大目に見てあげて下さい」

『まぁ、依頼主のゆめちゃんがそう言うなら…』

「もし、また何かちょっかいを出して来たら、その時こそ容赦しませんから」

『おお、逞しいな』

「だって、色々ありましたからね…」


しみじみと呟き、一拍置いてから、私は話を再開した。


「じゃ、そっちの書類も明日渡していただけるんですね」

『ああ』

「ありがとうございました。思っていたよりも早く決着しました。ベンさんに頼んで本当に良かったです」

『いや、結構苦戦しちまったけどな』
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