夢を忘れた眠り姫
「だって、すんごい頑固で威張りんぼな人ですもん、あの人。だけどベンさんだからさほど長期戦にならずに済んだんですよ」

『最後の頃はだいぶ毒気が抜けたというか、しんみりしょんぼりしてたけどな』


きっとあえてなのであろう、ベンさんは淡々と事実を告げた。


『サインし終わったあと、じいさん、「どうしてこんな事になってしまったんだろう…」って呟いてた』

「それはこっちのセリフですよ」


思わず低い声音で返してしまった。

本来なら私と彼は和気あいあいとした間柄になれた筈だったのに。

普通の孫のように「おじいちゃん」て、素直に甘えてみたかった。

私の知らないお母さんやお父さんの思い出話をたくさん聞かせてもらいたかった。

だけどそうさせてくれなかったのは、その関係性を壊したのは、他でもないあの人自身じゃないか。

今さら嘆いたってもう遅い。

まさに自業自得だ。

娘に続いて孫にも愛想を尽かされ、縁切りされ、これからの人生一人寂しく生きていくのは至極当然の流れだ。


『まぁ、色々ぶちまけたい思いはあるだろうけど、今日の所はこの辺にしておこう』


ベンさんはイライラムカムカトゲトゲメンタルの私を優しくなだめた。


『もう夜遅いし。明日に備えて早く寝な、ゆめちゃん』

「……はい」


「それではまた明日」『ああ』「おやすみなさい」『おやすみ』と挨拶しあい、電話を切ったあと、思わず脱力した。
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