化学恋愛
3ℓ
昨日はかなり混乱して家に帰った。
当たり前だ。
あんな事があって
混乱しないわけがない。
でも、俺は変わらない…はずだ。
いつものように学校に行って
昼休みに実験室に行けばいい。

玄関を出ると松木がいた。

「おっせーよ!」

少し待たせてしまったみたいだ。
考える事が多すぎて
用意をするのに時間がかかった。

学校に着いて下駄箱に
靴を入れていると、昨日の少女が居た。
俺は全力で目をそらす。
少女はぺこりと頭を下げて
歩いて行った。
俺もすぐに靴をしまって
教室に行く。

化学の授業があった。
葛西先生もいた。
なのに全然ドキドキしない。
そう思うと学校が全く楽しくない。
くっそ…先生のせいで…。

昼休みになった。
俺は実験室に走った。

ガラガラッ

ドアを開けるとそこに居たのは…
昨日の少女だ…くっそ…
見たらアウトだ。

「何してるんです?」

少女が言った。
今はその声さえも
愛おしく思えてしまう。
薬のせいなのに…。

「べ、べっつにぃ?」

俺は目をそらして言った。
薬のせいだ薬のせいだ。

それから葛西先生を待ったが
中々来ない。

「あなたは先生のことが
好きなのですか?」

少女が口を開いた。
出来れば喋らないでほしい。
心臓が潰れそうになる。
でも、無視はできないから
一応答えた。

「あ、あぁ、そーだよ。」

「そーなのですか」

少女は少し笑いながら言った。
バカにしてるのか?
まぁ、しょーがない。
教師に恋するとかどうかしてる。

「お、お前は好きな人いねえの?」

俺は全然違う方向を向いて言った。
……………って、おいっ
待て待て俺、何聞いちゃってんの!?
いや、別に流れで聞いただけだしぃ?
深い意味とかないしぃ?

と、自分で言い訳をした。

「いるのですよ。」

昼休みの校舎、
窓は全部閉まっているのに
冷たい風に吹かれているような気分だ。
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