化学恋愛
4ℓ
__「いるのですよ。」____

……………………………。
い、いや、別に傷ついてねぇし!
高校生なんだから普通だろっ
うん、好きな人くらいいるって!

心ではそう言い聞かせているけど、
実際はかなりショックだし
涙が出てきそうだ。

泣くなよ、泣くな、俺!
あ、やばい本当に泣きそう。

「嘘なのですよ。」

少女が言った。
……………………嘘かよっ!
驚く反面、ホッとしていた。
反射的に目が少女の方に向いた。
バチッと目があう。

あ、だめだ。
と思って俺は教室を飛び出した。
走って階段を駆け上がって
屋上に上がった。
好きになってしまいそうで困る。
どうすればいいんだ。
俺は塔屋の上でうずくまった。

でもうずくまっていたって
何が出来るわけでもなく。
どうしようもない。

起き上がって教室に戻った。

そして6時間目が終わって
HRを終えて家に帰った。

家に帰ってするのは
宿題とゲームくらいだ。
いつものこと。
高校生にとっては
普通のことだ。

ただ、
いつもと違って
何にも集中できない。
宿題の問いと問いの間、
ゲームのロード時間、
ほんの少しの隙間に
あいつの顔を思い出してしまう。

………というか俺って…
あいつ(少女)の名前
知らない。
え、名前も知らない人を
好きになるって…。

名前は知りたい。
出来れば学年も
クラスも誕生日も知りたい。
でもなぁ。

明日からは学校を休もう。
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