寒くて暖かい晴天
「ちょっとあんたたち、こんなとこでなにやってんの!」

聞き覚えのある声に目が覚めた。

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

ハッとして起き上がろうとしたら、何故か身体が動かない。

視界は暗いし、何かに押し付けられたみたいに息苦しいし、しかも暖かい?

恐る恐る顔を上げると、私を抱き締めながら、スヤスヤと眠っている晴輝くんの寝顔。

「ちょっと晴輝くん!? 何してんの、離して!」

叫ぶと、晴輝くんはゆっくりと目を覚ました。

半分起きて、半分眠っているような顔で私を見下ろし、ふにゃっと柔らかく笑うと……。

「史華ちゃん」

そう言うなり、いきなりキスされた。

ちょっと待てー!

そう思った瞬間に、頭にゴツンと鈍痛が走る。

「公衆の面前でなにやってんの!」

慌てて起き上がると、目の前にはお母さん。

畑仕事帰りか、パーカーにジーンズというスタイルで鬼の形相で立っていた。

「晴輝くんも! 大学卒業するまでお預けだって言ってあるでしょ! いいからあんたたち、昼ごはんだから家に戻りなさい!」

ああ。お昼ごはん。

ぼんやりしながら、ゲンコツされたらしい痛む頭をさすり、隣りの晴輝くんを見る。

「ところで……大学卒業するまでお預けって?」

それはなぁに?

晴輝くんもゲンコツをくらったのか、ちょっぴり痛そうに頭を押さえていたけど、私と目が合うとにっこりと微笑んだ。

「大学卒業するまでお預けされてるんだ」

「……何を?」

「史華ちゃんを」

ニコニコ微笑む彼に、白っぽい花びらがハラリと落ちる。

それは確かに、のどかな春の昼下がりのことなんだと思う。

……なんだろう。聞かなかったことにしちゃおうかなぁ。









2016/4/11
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