ヘタレな野獣
ヨレヨレ君が足を止め、振り返った。

真顔で首をクイッと、着いて来いらしき仕草をする。

仕方無い、今日は下柳の言い訳を聞きに来たんだ、そして私の思いも下柳にぶつける為。


足早にヨレヨレ君に駆け寄り、下柳の後を追った。

梅雨の真っ只中、こんなに晴れるのは珍しい、そんな6月の昼下がりだった。









『俺は・・・多分あいつが好きだったんだ。
多分その“好き”は異性に対するそれだったような気がする・・・
だから、あいつに愛されていたあんたが憎かったんだと思う・・・』


正君が眠る墓前で、下柳はポツリと零した。




不思議と、特に驚きはなかった。


私の知りたかった事は、あの日部長達の前でヨレヨレ君が明らかにした。


その時の方が衝撃的だった。



許せるのか、そう聞かれたら・・・

どうなんだろう、この世に居ない人を想い、かつての恋人に嫉妬する・・・


昼メロじゃないんだから・・・



けど下柳の気持ちは、少しは判るような気がする。


無かった事には出来ないけど、体の傷はもう癒えた。

心の傷も下柳を哀れむ気持ちが癒えさせると思う。


だから私は彼を哀れに思う事にする、報われない彼の恋心を哀れむ事にする。



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