ヘタレな野獣
もう何人か集まってるよ、お父さんはそう言いながら、二階を指差した。


「その前に、私、正君とお父さんに、お話・・・いえ、報告があります・・・少し、お時間いいですか?」

「ん?どうしたんだい、改まって・・・
じゃ、アレがいる、仏間に行こうか」



そして私達は、襖を開けた。




座布団を勧められたが、それには従わず、直球で、切り出した。


「お父さん、やっと・・・
やっと正君を思い出に出来る時が来ました。
私・・・好きな人が・・・出来ました」

「っ!・・・そうか、そうかそうか。やっと、前に進み出したか、・・・
いや、よかった、本当によかった。
なぁ正直、良かったなぁ」


お父さんは満面の笑みを浮かべて、仏壇に飾られている正君の遺影に向かって、話し掛けながら、ろうそくの火で線香に火を点けおりんを一つ二つと鳴らした。



「一つ、聞いてもいいかな?」

えっ?

私は黙ったままお父さんを見た。

「その、とこちゃんが好きな人は、とこちゃんから好きになったの?」


視線を反らさず、ゆっくり頷いた。


「その人もとこちゃんを・・・」

「・・・どうでしょうか、もしかしたら、私の片想いかもしれません・・・」






< 138 / 148 >

この作品をシェア

pagetop