ヘタレな野獣
「・・田崎さん、ちょっと・・・」

ドアが閉まるや否やヨレヨレ君が私に話しかけてきた。

「はい、何でしょうか」
「・・・ここ、この数字は・・・どこから拾いましたか?」

えっ?

「どういう意味でしょうか・・・」
「・・・気を悪くされたのなら謝ります、が、しかし、この数字では・・・」
「どうしたんすか?」

気まずい気配を感じたのか、武田君が話に入ってきた。

「あっ、これっすか?
弾いたのは俺っす、それが何か?」

その言葉を聞いて、ヨレヨレ君は武田君に色々説明をして、自分の考えを伝えていた。



「すみません、一箇所抜けてました。どうしましょうか」
「部数も知れています。訂正しましょう」



ヨレヨレ君は長机に置いていた資料を捲り、訂正箇所に二重線を引き訂正印を押し、その上に正しい数字を書き込んでいく。

私もヨレヨレ君に習い、数字を確認して訂正していく。

「ほら、武田、アンタも手伝いなさい!」

そう言いながら、ポケットから浸透印を取り出し、捺印しようとした。


「ああぁあ!」

突然ヨレヨレ君が大きな声を出した。

「なっ、何ですか!」
「印は僕が押します。田崎さん達は訂正箇所への二重線と、正しい数字の書き込みをお願いします」
「・・・?はい、分かりました・・・」

私達はヨレヨレ君に言われた通り、私事に従った。

コンコンコンッ
「失礼致します。会議室の準備が出来ました。どうぞこちらへ・・・」


先程とは別の女性社員がやって来て、私達を案内してくれた。


どうにか訂正は間に合った。

しかし、私は凄く落ち込んでいた。

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