雫に溺れて甘く香る
可愛い彼女
*****



「……いらっしゃいませ」

少しだけトーンの上がった接客用語。

何となく驚いたような顔をしている続木さんを見上げながら、それには片眉を上げて対応する。

「なぁにー?」

「あ。いや。金曜のこんな遅い時間に来るなんて珍しいから……」

「飲み会だったの。だけどろくな食べ物でなかったし、お腹空いたの」

確かに、もう22時なんだけどね。

言われる前に空いていたカウンター席に座ったら、篠原さんが無表情に顔を上げた。

「メニューいりますか?」

「あー……いいや。いつもので」

どこかの居酒屋の常連みたいな事を呟いて、つけていたピアスを外す。

お水のグラスを置きながら、篠原さんは外してカウンターに置いたピアスと、付け替えてしまったいつものピアスを見比べる。

「飲み会って……女子会ではなさそうですね?」

おお。鋭いですねー。篠原さん。

「女子会なら、そのまま一緒に連れて来るよ。ただ課の同僚に誘われて、飲みにいっただけ」

「そうなんですか」

そう言って、篠原さんはチラッと私の服装を見ると、それ以上は何も言わずに厨房の中野さんに声をかけにいった。

今日の私の服装は、ちょっぴりレースを使った白のブラウスに、少し丈が短めの黒のチュールスカート。

今日は外回りもなかったし、どちらかと言うと、今日はヒラヒラと女らしさを強調した服装。

メイクだって微かに今時を参考にしたし、ピアスもいつもみたいに丸い目立たないものじゃなく、キラキラ可愛いものをつけた。

そんな格好は珍しいだろうけど、だからどうしたっていうの?

似合わないとでも言いたいわけ?
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