雫に溺れて甘く香る
「帰りに飲み物を買おうとしてコンビニに寄った」

落ち着いた声で話始める彼に、真面目な顔をして頷きを返す。

「うん? 飲み物くらいあるのに」

「雑誌コーナーに大学生ぽいカップルがいて、女の方が“結婚は25までにして、マイホームに住むのが女の子の夢”だと言っていた」

……へえ。

「ちょうどここも手狭だと考えていたし、たぶん悠紀の年齢もそれくらいだろう……?」

覗き込む続木さんを見下ろしながら、頭が痛くなってきそうだなって思い始める。

……話のオチが見えてきたよ。

狭いから引っ越ししたい、でも引っ越すなら、最初から家にした方がいいな、とでも思った。つまりはそういうこと……?


そんなん普通は思わないなぁ。


「真に受けてどうするの。私はそんなこと夢見た記憶はないんだけど」

「まぁ。あのカップルはともかく、それもいいんじゃないかと思ったんだ」

「つまり、これはプロポーズなの?」

「そう聞こえないか?」

聞こえるはずがないだろう。下手すれば世間話になって聞き流すよ。

思わず呆然とした私に、続木さんはニヤッと笑った。

「それには夢があるんだな?」

「な、なな何が」

「プロポーズの定番は……何かプレゼントに指輪か?」

するつもり?

あんぐりと口を開けて絶句した私に、続木さんは意地悪そうな顔をする。

「心配するな。絶対にしないから」

「それ心配じゃないでしょう! プロポーズならそれらしくしてよ!」

「やっぱりド定番が好きか。そういうとこだけ女だな」

「なにそれ、言ってること無茶苦茶なんだけど!」

叫んだら、真面目な顔をして睨まれた。

「なら、もう少し好みをハッキリさせてくれ」
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