雫に溺れて甘く香る
「……酔うと可愛いんだな。工藤さんは」

「ぇえ~?」

篠原さんは何を言ってるんだろう。
可愛いだなんて、親からしか言われた事ないよ。

「何をふざけた事……」

今度は篠原さんに詰め寄ろうとして……。

「きゃっ」

続木さんに抱え込まれる。

「お前はシノに近づくんじゃない。あいつは手の方が早いんだ」

「お前もな?」

「シノに言われたくないな。どうせ城島さんをいいように弄んでるんだろうが」

「オジョウで遊べるか。結構、気ィ強いんだぞコレ」

「その割に、今日嫌がってても手伝わせた癖に」

「じゃねぇと、帰るだろうが」

「帰ったじゃないか」

「誤解したからだろ」

「誤解させねぇように、しないからだろうが」

……何だか解らないけれど。

篠原さんのひざ枕で眠っていたはずの城島さんが、ムクリと起き上がった。

「あんたたち、うるさいんだけど」

不機嫌そうに、一同を見回す城島さん。

話していた内容が内容だけに固まる皆。

城島さんは、何故か私に目を止めると……。

「虐められなかった?」

はんなり笑って首を傾げる。

「え……あ。はい」

「虐められたら言ってよね? 篠原さん殴っておくか……」

そう言って、ポテンと篠原さんのひざに頭を乗せ目を瞑った。

「スー……」

とても安らかな眠りについたみたい。
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