雫に溺れて甘く香る
「うん。でも当日キャンセルって、大丈夫?」

「大丈夫。そんなこと心配しなくてもいい」

頭を撫でられて、何となく幸せになりながら顔を彼の胸に押しつける。

暖かさが心地よくて、安心するんだよね。

「ありがとう。いろいろ考えてくれたんだ」

「お前は希望をあまりいわないから。結果、いつもサプライズみたいになるな」

「別に言ってくれてもいいじゃない」

「プロポーズするから正装しろとか言うのか?」


……それは言わないだろうけど。


なんだろ。今日の続木さんはとても饒舌だな。

そして、妙におかしい。

「まだまだたくさん知ることがいっぱいあるねー」

「お互いにな。いいから。眠たいんなら寝ろ」

「うん……眠たいの、よくわかったね……」

目覚めたのは一瞬で、またうつらうつらしながら彼に手をのばしてくっついた。

「まぁ……そうだな。少し慣れた」

「何が……?」

「寝ぼけた悠紀は、素直に甘えてくるから」

「うん……でも、いつだって甘えてるでしょ」

「どこがだよ」

「だって……」


私はあなたが好きだから。これでも甘えてる方なんだよ。


だけど、その言葉が声になる前に私は眠りに落ちていた。

だから、彼が困っていようが、怒っていようが、私は知らない。














2016年7月11日 完結
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