雫に溺れて甘く香る
「なに飲みますか?」

なんて、ちゃんと聞いてくれるのもいいね。

この間は“とりあえずビール”だったもんなぁ。

爽やか系好青年と、ちょっぴり肉体労働的なワイルド系、ぱっと見た感じは子犬系男子と、真面目そうなインテリ風男子。


……これはまさに多種多様そう。


好きな飲み物と食べ物を注文して、話が盛り上がってくると、どんな繋がりがあるのかが興味をそそる。

だって私と同じ営業マンと、大工さんと、美容師と、公務員に、どんな接点があるのかが見出だせない。


聞いてみると笑われる。

「簡単ですよ。高校の同級生なんです」

同じ営業職で話しやすいのか、営業マンの彼が、気がつけば隣りに座っていた。

「千夏とは、家が近所なんです」

千夏……? と、言われて疑問符を浮かべたけれど、それが原さんの名前だと思い出して頷いた。

「工藤さん。どう思います?」

「何がですか?」

あれ。と、彼が指差した方向には、大工さんの彼にピッタリの原さん。


ハートマークが、彼女から一方的に飛んでるように見える。


どう思うも何もなぁ。彼女の気になっている彼が、あの大工さんだとわかったくらいかな。

「……どうして、そんなことを私に聞くんですか?」

「工藤さん、ピンチヒッターの人数あわせでしょう?」

あれ。バレてるの?

「千夏が昼くらいにメールくれたんですよ。二人来れなくなったって」

「ああ……」

そんなこと、わざわざ申告しなくてもいいだろうに……。

「だからメンバー揃えないと、今後も一緒に飲まないって返信したら、頑張って集めてきましたねー」

とても爽やかに呟くから、思わず彼を凝視した。

「あの……」

「はい?」

爽やか系好青年は、キラキラ爽やかなままで私を振り返る。

「原さんが好きなら、なんでこの場を設けたんですか?」
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