雫に溺れて甘く香る
むくむくと反抗心が沸き上がってきたけれど、それを素直にぶちかますのも……。


ちょっと怖い。


だから沈黙を守ったまま、また手を掴んでくる彼に任せて歩き始める。

そうしながら、つらつらと意識は内に内にと潜っていった。


正直な事を言うと、このまま終わるんだろうな……と、漠然と認識していたわけで。

会わなければ会わないまま……きっと続くことはないだろうと思っていた。

寂しい……なんて感じたこともない。


だいたい最初から寂しかった。


会わなかった間に飲み会にも参加したし、誰かを紹介されたりもしたけど……。

なんとなく『今はいい』とか言いながら、新しい出会いには見向きもしない。

誰かが欲しかった訳じゃないし。


その理由を考えたくはないなぁ。

理由を考えるのは……突き詰めるのは怖かった。


まぁ、また会ったからって、まさかいきなり堂々と連れ出されるなんて思ってなかったのに。


今、続木さんは『話がある』と言う。

そう言えば、あまり話をしたことなんてなかったな……。

続木さんはいつも不機嫌そうにしていたし、私は私で“大人の女”をしていたから。

時間があれば抱き合うこと、彼の熱を感じること、それが関係の全てだ。


よし、覚悟をしよう。

話をしたいと言うなら、ちゃんと話をしよう。

これで、本当に終わりにしよう。
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