雫に溺れて甘く香る
「ちなみに俺がやめようって言ったのは、中途半端な付き合いをやめようって言ったんだが」

「や。それは、私も……」

「お前は関係そのものをやめようとしたんだろ」


それはそうだけ──……


「……ん?」

「ん、じゃねぇ。馬鹿が」

低い声が優しく響いて、思わず続木さんの手に触れる。

もしかして、という期待をもって。

「……続木さんは、続け……たいの?」

「こんな中途半端は嫌だ」

どこか偉そうな彼に、少し戸惑う。

「えと……どう、したい……の?」

「お前はどうしたい」


それを私に聞くの!?


どうしたい……って。どうすれって言うのよ!

混乱が表情に出たらしい。

続木さんはニヤリと笑うと、触れていた私の手を取って指を絡ませる。


「お前、本当に抱かれてると素直なんだな」

「な、なな……」


何を……っ!?


「抱かれる時に……俺の事、好きでしょうがないって目で見てくるのって反則だろ」

それからその手に唇を寄せて、軽くキスをすると私を見た。

困った様な、照れたような……そんな笑みを浮かべて。

「人が女と別れんのどうしようか悩んでる時に付け込んできたし」

「え……っ?」


知らない。


知らないから、そんな話……。


「結果としては、お前と寝たのばれて別れたけど」


え。そうなの? 別れたの?


「ご、ごごゴメン」

「謝ることじゃない。どうせお互いに別れる理由を捜してた」


そう言って、続木さんは私の手を両手で包み込む。


「……って、告白だって解ってる?」
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