雫に溺れて甘く香る
解るはずがないだろうがっ!!

そんな告白聞いたことないって!

前代未聞でしょうが!


……って。


「……ん?」

「だから、ん……で終わらせんじゃない」

「や。だって……」

言いながらも、視界がみるみる歪んでいって……。


「げ……」

「ゲ、とか言わないでよ」

「女の涙は武器だろうが」

「そんなコト、言われたって」

泣き止まない私に、続木さんは盛大な溜め息をついた。

「もう溺れてんだから、これ以上溺れさせんなよ」

「──……は?」

「聞き流せ。じゃ、寝るか」

「え?」

ひょいと抱き上げられて、瞬きをする。

「仕事は?」

「……休みだけど」

「ならゆっくり出来るな」

「は……何を?」


ベットに寝かせられながら、続木さんは眉を上げ──……。

それからゆっくりと微笑んだ。


とても……妖しく。


「一日は長いぞ?」

「は!? ちょっと……」

待って……と、言う前にムッとされた。

「待たない」

「でも!!」

「悠紀……」

耳元に吹き込まれた低い声の囁き。名前を呼ばれて動きを止める。


「それ……反則だと思うの」


その言葉に、続木さんが小さく笑った。










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