雫に溺れて甘く香る
新発見?
*****



「それで。落ち着くところに落ち着きましたか?」

仕事帰りの帰り道。企画チームとの仕事も一段落して、彼のお店にご飯を食べに来た。

……そのはずなのに、目の前の篠原さんに無表情にそう言われて、思わず笑顔で固まってしまう。

「あの……篠原さん。普通、いらっしゃいませじゃないでしょうか?」

「ダチの彼女にいらっしゃいませって何か変じゃないです?」

「変じゃないです! それに、ダチのって……」

篠原さんはスイッと私の背後を見て、それから眉を上げた。

「金曜日以来、あいつがご機嫌で気持ち悪いんです」

振り返ると、微かな笑顔でお客様にメニューを渡している続木さんを見つける。


……あれはいつも通りな気がするんだけど。

そうして注文を受け終わったらしい彼がふっと視線を上げ、バッチリ目が合った。

途端にニヤリと笑われる。

彼はそのまま戻ってこようとして……お客様に呼ばれて行ってしまった。


「……ほらね?」


全然、わからない。

くるりと篠原さんを振り向くと、カクテルを置かれる。

「ありがとう……」

「いえいえ」

「って言うか、私には続木さんがご機嫌そうには見えないんだけど」

お店に出迎えてくれた彼は、以前と同じで、私を見下ろすと無表情にカウンターを指差しただけだし。

「いやぁ。だってさ、あの外面野郎が工藤さんには素だし」

ポツリと呟かれた言葉に目を見張った。
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