おにいちゃんの友達
どこをどうやって歩いたかも覚えてないくらい、ふらふらと家にたどり着いた。

「おかえり、ユイカ。」

「お兄ちゃんは?」

「まだ。何も連絡はないわ。」

「そう。」

少し期待したけど、兄の居場所はまだわからないままだった。

「け、警察には・・・?」

その言葉を口にしたとき、なんだか恐くなって背筋がふるえた。

「まだよ。今、マサキくんが心配して来てくれてるの。もう少し待ってみようって。シュンタは変なことするような奴じゃないからって。お母さんもそう思うの。それにしても、マサキ君がいてくれて本当に心強いわ。」

母は、明かりのついたリビングに視線を向けた。

マサキ、来てるんだ。

思わず、玄関で靴を脱ぎ捨ててマサキのいるリビングに走っていった。

「マサキ。」

「おかえり、ユイカ。」

マサキはいつもみたいにやわらかい笑顔で笑ってくれた。

それだけで、さっきまでの不安な気持ちが和らいでいく。

母が落ち着きを取り戻したのも、きっとマサキのお陰だね。

マサキのぶれない心が私達の不安を取り除いてくれていた。

「こんな大変な時に、俺が上がり込むのもどうかとは思ったんだけどさ。俺も心配だし、一緒に待たせてもらうよ。」

「うん。もちろんだよ。」

私はマサキの隣に座った。

「今日は部活?」

マサキはつとめて普通に聞いてきた。

「うん。」

私はただ、頷いて、マサキの横顔を見つめていた。

こんなに間近でゆっくりとマサキの顔見るのも久しぶりだ。

日に焼けた頬。長い睫。黒目がちな瞳。

ずっと見ていたかった。

「マサキも部活だったの?」

「ああ。だけど、シュンタのことが心配だったから、片付けは後輩に任せて先に帰らせてもらった。ひどい先輩だろ?」

「いいんじゃない?普段ちゃんとしてれば。」

マサキは少し驚いた顔をして私を見た。

「なんだか今日のユイカはいつもと違うよな。調子狂うよ。ちーっとは成長したか?背は小さいままだけどな。」

いつもと違う。

私も自分がいつもと違うと思ってた。

こうやって、マサキの隣に座って、穏やかな気持ちでマサキと話ができてる。

「ユイカ、あんたも何か飲む?」

母はキッチンでお湯を沸かしていた。

「いらない。」

マサキが隣にいてくれたら、全て十分な気がした。
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