熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~


「みさき、おバカじゃないよぉ。おバカだったら、お芝居のセリフとか覚えられないしぃ、それに○※◆△&$#%@!……」

彼女は声のトーンを1オクターブ上げて、意味不明のことをしゃべりはじめたけど、あたしはケータイを耳から遠ざけた。


たしかに彼女の言うとおり、テストの点は悪いクセしてセリフ覚えだけはカンペキだ。

同じ演劇部に身を置きながらも、あたしが裏方の美術スタッフをやっているのに対して、彼女が看板女優をはれるのも、単に彼女がカワイイからだけではないのは分かる。

普段は、どぅ~しようもないおバカキャラ全開のクセして、一度、舞台の上に立つと、まるでそのお芝居の登場人物の役の魂が乗り移ったかのように、ビシッとするのだから、生まれながらの天然天才女優ともいえる。


それにしても……とあたしは思った。

ジョージ先生、同じバレー部だから、簡単にカンケーが持てたのかもしれないけど、どーせ生徒と付き合うんなら、みさきちゃんと付き合えばよかったのに。

美帆はボーイッシュ系でカワイイ系じゃない。みさきちゃんにはかなわないけど、美帆に比べれば、あたしのほうがカワイイと思う。

そんな美帆が先生と付き合うのはヤッパリ腹が立つ。

< 11 / 200 >

この作品をシェア

pagetop