熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「なぎさちゃん、ヒドイっ。みさきのこと、“おバカ”だと思ってるでしょっ!?」
「そんなこと全然思ってないよっ」って言えないあたしがいた。
小っちゃい頃ならともかく、中3にもなって自分のことを“みさき”と呼ぶ彼女のことを、あたしはもちろん、クラスのみんなだってクチにこそ出さなかったけど心の中では、どぅなんだろう?と思っていたし。
文句ナシにカワイイんだけど、でも、ぶっちゃけ、みさきちゃんって、どぅなのよ? そう思わせるようなエピソードは山ほどある。
制服のスカートのファスナーが何時間も全開のままだったなんてことはよくあることで、パンツを後ろ前逆にはいてきたこともある。
ある日の下校途中に突然…、
「ねぇ、ねぇ。ゲッキョク駐車場って、全国どこ行ってもあるねぇ?」
…と言ったこともある。どうやら彼女は、“月極(ツキギメ)駐車場”のことを月極(ゲッキョク)駐車場というグループ企業だと思っていたらしい。
またあるときは…、
「“トムソーヤの冒険”って旅をしながら妖怪とかをやっつけるおハナシだと思ってた」
…とも言ったこともある。