熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~

あたしは耳をふさぎたいような気持ちだった。


でも―――――


「でも信じられない…航平くん、そんなことするようなヒトじゃないよ……」

もちろん信じられるはずがない。

でも、そのときのあたしは、まるで自分自身に言い聞かせるように、彼はそんなことをする人間ではないと言っていたような気がする。


「だって……だって、このビリビリのドレスが動かぬ証拠じゃん……」

泣きじゃくりながら彼女が否定する。

たしかに物的証拠はある。

それでも、あたしは信じられなかった。

彼に乱暴されたというのはみさきちゃんの証言でしかない。さっき、ひとりで部室に残っていた、と言っていたから目撃者もいないと思う。でも、これじゃあ、ジョージ先生とキスをしたと自ら暴露した美帆と同じだし、なにより、あたしは航平くんを信じたかった。

「でも、どうしても信じられな…」と、あたしが言おうとすると、それを遮って強い調子で、みさきちゃんが言った。

「じゃあ自作自演だとでも言うのっ」

「そんなことっ…」
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