熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~

「みさきがこの衣装をどれだけ大切にしてきたかくらいのことは、ずっと一緒に部活をがんばってきたなぎさちゃんなら分かるはずでしょ? そんな大切な衣装を自分でビリビリにするわけないじゃんっ」

「うん……」

たしかに彼女の言うとおりだ。前にあたしが舞台の小道具の色を塗ろうとしていたとき、あやうく筆の先っちょがドレスに付きそうになって、彼女に鬼のように怒られた記憶がある。それだけ大事にしていた衣装を自分で破るなんてありえないと思う。


でも、どうしても彼がそんなひどいことをする人とは思えない。

だけど夕方、2時間以上も連絡がなかったのは、連絡できない状況にあった…つまり、みさきちゃんにそういうことをしていたからだと考えることもできる。それにみさきちゃんのことが好きになったから、あたしのことなんか無視していたとも考えられる。

そう考えるとつじつまが合うし、納得もいく。


『あなたのいうとおり、あたしはあなたのことを何も知らなかったのかもしれません。悪いけど全部なかったことにしてください。もうメールも電話もしないでほしいです。あと学校でも話しかけないでほしいです』


あたしはその夜遅く航平くん……いや、アイツに最後のメールを送信した―――――

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