熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「そっか…そーだったんだ……」

あたしはうつむいて、教室の床の1点を見つめた。彼のことを正義感の強い学園ドラマの主人公みたいに思いはじめていたあたしにとって、彼のことばは裏切られたような淋しさと悔しさを感じさせるものだったからだ。

アレ以来、ただ「ありがとう」が言いたくて、いつも遠くから見ていたのに、これまでの日々はなんだったんだろう?


考えてみれば、あたしはいつも妄想ばかりしていた。

はじめてのカレシとの純愛を妄想しながら、現実にはひと月ともたずにジ・エンド。

その後、辛い現実から目を逸らすかのように、若いハーフのイケメン先生に憧れた。最初からかなわぬ恋だと分かっていながら、それでも先生との幸せな日々を妄想するのは楽しくて、もし美帆とのことがなかったら、きっと卒業するまで先生への妄想を続けていたと思うし、青春の1ページとしてキレイな思い出になっていたと思う。

そして、東京から来たクールな転校生を正義の味方だと妄想して…、でも真実はそうじゃなかったことを知って、また凹んだ。


オトナの階段を1段登る度に、世の中というものがいかに自分の想像していたものと違うのかということを思い知らされる。

だからこそ現実から逃避するように妄想してしまうのかもしれない―――――
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