熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「昨日、“神さまに会う”なんて言って、急いで学校から帰るから、いったいどこ行ったんだろ?って思ってたら、なぎさちゃん、比嘉くんに会ってたそうじゃん?」
「エッ!」
あたしは思わず立ち上がっていた。
「な、な、なんで知ってるのっ!?」
驚きすぎて舌がもつれている。
「昨日、なみちゃんが、本屋の前で2人が一緒にいるのを目撃したんだってさ」
「えっ、なみがっ!?」
なみは“歩く放送局”って呼ばれるくらいクラスで一番おしゃべりでクチが軽いコ。
…ったく。アイツ、ホント、おしゃべりなんだからっ。
「恍惚(コーコツ)っていうの? なぎさちゃん、なんか、ぽぉ~として、夢見心地みたいな顔してたらしいじゃん?」
「ち、ちがうよ、アレはっ…」
あたしはココでことばに詰まった。魚住とと先生に会っていたなんてこと、口が裂けても言えやしない。
だって、あたしが小説家を志しているということは、家族や友達にも内緒にしている、あたしと比嘉くんだけの秘密だから。