アイ・ミス・ユー
針のムシロにいるみたいな気持ちになってしまった。
楽しかったのに、それが一変したみたいに。
さりげなく席を外そうか迷っていたら、食べ物が無くなった冷めた鉄板をヨイショと持ち上げた金子が、私に声をかけてきた。
「これ、返してきますねー。綾川さん、手伝ってくれない?」
「あ、うん」
反射的にうなずいて、鉄板の片方を持つ。
自然な形であの場から抜け出せて、内心ホッとした。
木々に囲まれた自然の道を、鉄板を持ちながら金子と歩く。
これは洗わずにキャンプ場の本部に持っていくだけでいいので、参加者はとても楽チンなのである。
なんにも考えてなさそうで、実は彼は私を助けてくれたのかもしれないと思った。
「ありがとう。連れ出してくれて」
「ううん、余計なお世話かなって迷ったんだけど」
「助かったよ」
「他人に話したくないこともあるよね、恋愛って」
まぁ、いつもなら絶対口にしないような質問だったから、お酒のせいだったんだと信じたい。
「みんな健也の粗探しをしたいだけなのよ。見た目だけは完璧だから、あの人」
「見た目が完璧なだけいいよね。俺なんてよく顔に特徴がないとか言われるよ」
金子の間抜けな発言が面白くて、ついつい場違いに吹き出してしまった。