アイ・ミス・ユー
「そこまで言ったんだから教えてよ」
気になってラーメンを完食出来ないので、グイッと顔を近づけて耳をそばだてた。
「誰にも言わないから」
「隠してるわけじゃないけどさ」
「じゃあなおのこといいじゃない」
金子は観念したように息をつき、ほとんど食べ終わったラーメンの器を箸でつつきながら視線を落とした。
「部長の知り合いの娘さんを、ぜひ俺に紹介したいって言われたんだ。彼女がいないならいいだろうって。どうにか断ろうと思って、それでつい嘘ついたの」
「なんて?」
「彼女がいるので、受けられませんって」
「じゃあ、お見合いはナシ?」
コクンとうなずいた金子は、「でもね」と話を続けた。
「たまたま話を聞いてたらしい今野が乱入してきて。俺には彼女がいないはずだ、って余計なことを言うもんだから。で、部長がどっちなんだと混乱したわけ」
「うんうん、それで?」
「彼女はいますって断言したら、そのうち紹介してくれよ〜とかなんとか言われて。今野が俺に悪いと思ったらしく、それなら既成事実作ればいいって合コンに誘ってくれたの」
「既成事実……」
いちいち発言することが軽率なんだよな、今野拓。
本人に悪気がないから余計にタチが悪い。
「で、行くの?行かないの?」
結論が気になって答えを急かすと、逆に金子に聞き返された。
「そっちこそどうなの?婚活パーティー行くの?」