アイ・ミス・ユー


思いもよらなかった一言に、穏やかだった心臓がバックバク鳴り始めた。


この男は、どこまで意識して話をしているんだろう。
計算ずく?それとも全部無意識?


私がじっと彼を見つめ返すと、金子は勢いよくさっきまでまっすぐに向けていた視線を背けてしまった。


やがて聞こえてくる、つぶやきのような言葉。


「今の、俺の精一杯の気持ち」


マンションは目の前。
私たちの足も止まる。


ごちゃごちゃと考える前に、金子に腕を引かれた。
あまりに突然のことだったから、ヒールがよろけて彼の胸に飛び込む形になってしまった。


大きな手のひらが私の体を支えるようにして抱きとめられて、全身が心臓になったみたいにドキドキしてしまった。


「ゴメンナサイ。甘んじていくらでもビンタは食らいます」


抱きしめられて、甘いムードになるのかと思いきや。
聞こえてきた金子の低い声は、クスリと笑いそうになるものだった。


「ごめん、俺、ラーメンの味噌スープで酔ったのかもしれない」

「安上がりな胃袋ね」

「ビンタは?」

「………………しないよ」


夜中の道端で、ボソボソと抱き合いながら会話をした。
そして、分かった。

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