アイ・ミス・ユー


やっと、素直に言えた。
くすぶって、もどかしくて、心の奥に隠そうとしていた気持ち。
それを、伝えられた。


だけどそれをはるかに超えるような大きな愛で、金子は私を包み込む。


「好きだ、結子」


その彼の言葉で、さっきまで感じていた距離は消え去った。
半分すがりつくようにして、彼のキスに応える。


頭がボーッとしてきたところで、金子に抱きかかえられてリビングへ入り、そのままベッドへともつれ込んだ。


ヤバい、胸が熱くてはち切れそう。
一見すると草食系にしか見えなかった彼が別人のようにも見える。
本能のままに、想いをぶつけるように私にキスを落としてくる。


シュルッとネクタイを外しながら、「ビンタは勘弁だよ」と苦笑いする顔だけは、一瞬だけ普段の彼だった。


いつまでビンタを引っ張るのよ、と抗議しようとしてハタと思考がいったん止まる。


しまった!重大なことを忘れていた!!


「ま、ま、待って!待って!!」


完全にそっちモードになっている金子の手から逃れるように、身をよじって私がストップをかけたら、彼は頑として首を振った。


「無理」

「違うの、私だって同じ気持ちだよ!だけど、今日はダメなのっ」

「無理だってば」

「そ、そ、そうじゃなくて!」


ガバッと起き上がって、目をぱちくりさせている金子に全力で謝った。


「ごめんなさい!!生理なの忘れてました!!」












結局、その夜は2人で添い寝するだけに留まるという、彼には大変申し訳ないことをしてしまった。


でも、それでも何故だか心が軽かった。


きっと、素直に気持ちを伝えられたから。
こんなに優しくて温かい気持ちになれるんだと、不思議なくらい穏やかになれた。







ちょっと強引な金子も悪くないな、と思ったのは……本人には内緒のハナシ。


< 149 / 196 >

この作品をシェア

pagetop