アイ・ミス・ユー


すると、今野くんが思わぬ人物に目をつけた。


「主任!何笑ってるんですか!」


ぐるんと振り向くと、金子が笑いをこらえて口元を手で覆ってこちらを見ていた。
くだらない会話が聞こえて、面白かったらしい。


「楽しそうだね。なんか姉弟みたい」

「冗談はやめてください」

「そうなんですよ〜、ほんと姉ちゃんみたいで」


真逆の答えを返す私たちに、さらに金子は腹を抱えて笑うのだった。


「カラオケじゃなくてさ、ジンギスカン行かない?」


まだちょっと笑いを交えつつ、主任のくせに普通に話しかけてきた。
ジンギスカンに誘われたのは、私なのか今野くんなのか、一体どっちなんだろう。


目が泳いで、ことの成り行きを興味深げに見ている樹理と目が合った。
彼女はニンマリ笑みを浮かべている。


当の今野くんは万歳三唱とばかりに両手を上げて、


「いいですね!行きましょ!ジンギスカン食べたいです!」


とノリノリのご様子。


さりげなく会話からフェードアウトしようとしたら、横から金子が付け加える。


「もちろん来るよね、綾川さん。可愛い後輩の話、俺たちで聞いてあげようよ」


見えない腕で拘束されたような気分になった。









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