アイ・ミス・ユー
すると、部長が組み立てていたテントの骨組みが甘かったのか、少しぐらついて倒れそうになった。
「あっ、危ない!」
樹理が声をかけた直後、金子が翡翠ちゃんをかばうようにして肩を抱き、空いている方の手で倒れてきたテントを受け止めていた。
「すまん、金子くん!大丈夫だったかな!?」
酒田部長がアワアワと焦ったように駆け寄ると、彼は落ち着いた様子でうなずいていた。
「俺は大丈夫です。田上さんは?怪我はない?」
「だ、だ、大丈夫……です」
答える翡翠ちゃんの目は、傍目から見ても完全にハートマークになっていた。
「危なかったねー。ね、結子。ナイスだったね、金子」
ホッとしたように息をついている樹理に、私はなんとなく「うん」と曖昧に返事をすることしか出来なかった。
あいたたた。
なにこの胸のズキッ。
誰にでも優しい金子の姿を見たら、少しだけ切なくなってしまった。
まるで、まるで、まるで。
翡翠ちゃんに嫉妬してるみたいに。
一度は「この人は無いな」と思ったはずなのに、それが覆ることなんてありえるのかな。
よく分からなくなっていった。