アイ・ミス・ユー


「やっぱりいいなー、主任。見た目はミスターアベレージなのに中身が男らしくて素敵なのってポイント高いですよねぇ。彼女いるのかなぁ」


包丁を握ったことがないという翡翠ちゃんには、借りてきた食器やコップなどを出してもらうことにしたのだけれど。


彼女の金子への妙な憧れのつぶやきが私の耳に入る。
なにしろ私の真後ろにいるのだから聞こえるのは当たり前。
一応返事でもしておくか。


「いないって言ってたよ」

「ほんとですか!?立候補したら困らせちゃいますかねぇ〜」

「どうだろうね」


お肉を食べやすい大きさに切る。
勝手に金子が申し訳なさそうに翡翠ちゃんのアタックを断る姿を想像してしまった。


なんて失礼なんだ、私って。


女性陣が切り分けた食材は、大きな鉄板の上に次々と乗せられていき、金子が率先してトングで焦げないように引っくり返したりしている。


男性陣のほとんどはビールを開けて先に乾杯していて、運転手である金子は手持ち無沙汰らしい。
同じく運転手をつとめた今野くんは、なにやらスマホを片手に誰かと電話している。


翡翠ちゃんは煙が服につくのが嫌なのか、きゃあきゃあ言いながら鉄板の周りを飛び跳ねていた。


「私も手伝うよ」


もう一つ空いていたトングを持って金子のそばまで行って声をかけると、彼は顔を上げて嬉しそうに笑った。


「うん、ありがとう」


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