どこまでも、堕ちていく。


あの日から、道弘の私に対する態度は急変した。
普段の生活に大きな変化があったわけじゃない。
だけど何気ない会話や視線、
全てに威圧感を感じるようになった。
そして私の行動を監視するようになったのだ。
私に内緒でスマホを見たり、クローゼットの中の下着をチェックしていることも知っている。

「それでね、勇くんのママが不倫してるみたいな噂流されてー。だんなさんにも誤解されて大変だったみたいよ」
「そうなんだ。大変だね…」
「彩さんとこはどうなの?」
「へ?」

由美の言葉にパッチリと目を見開く。
幼稚園のお迎え時間までカフェで時間を潰していたところ。
正直ボーッと彼女の話を聞いていた私は、突然"不倫"の話を振られて反応に困ってしまった。

「彩さんの旦那さんは落ち着いてるし嫉妬深くなさそうよね?」
「ああ…、うん。どっちかといえば放置されてる感じだし」
「それくらいが丁度いいよ。ただの噂話で疑いかけられてもね」

由美に愛想笑いをしたものの心中は穏やかではない。
確かに少し前までの道弘は私や息子に無関心だった。
だけどここ最近の彼は私のことを疑い、まるでストーカーのように行動を監視している。
未だに隆志との関係を疑っているんだと思う。

「でも不倫って少しだけ憧れるわ」
「は?やだ、由美さんらしくない!」
「冗談よ冗談」

カフェを出て幼稚園への道のりを歩き出した私たち。
昼間から道の真ん中で堂々とこんな話ができてしまう辺り、由美には本当にやましいことがないんだと思う。
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