イジワル御曹司と花嫁契約
すぐに浮かんでしまう嫌な考えを打ち消すために頭を左右に振って、気を取り直してからクローゼットを開ける。


小さなクローゼットなのに、親子二人分の洋服をハンガーに吊るしてもまだ余裕がある。


選べるだけの量はなく、着るものは限られていた。


 唯一あるよそ行きのワンピース。


薄桃色の可愛らしいこの服は、去年の誕生日に母が私にプレゼントしてくれたものだ。


勿体なくて、外に着ていく機会がなかったワンピースを着ると、まるで母と一緒に出掛けるみたいで嬉しくなった。


 七月の初旬とはいっても、夜の外は冷える。


半袖のワンピースの上にカーディガンを羽織り、いつも一つ結びしている髪を下した。


 化粧をしたら化けると萩原さんが言っていたのを思い出し、化粧ポーチを開けた。


 萩原さんの口ぶりだと、私はいつもスッピンみたいに言っていたけど、一応ファンデーションとリップくらいは塗っている。


私だってもう二十三歳。


身だしなみ程度には化粧してるんだけどな。
< 10 / 280 >

この作品をシェア

pagetop