イジワル御曹司と花嫁契約
観覧車を降りると、園内は幻想的にライトアップされていた。


昼間とはまるで違う雰囲気。


手を繋いで歩く距離感も、心なしか少し近付いているような気がする。


 恋人同士のような甘い雰囲気が漂い、胸がきゅうっと締め付けられる。


幸せなようで、苦しい。嬉しいけれど、悲しい。


偽りの婚約者。この関係はまがい物。


 彰貴はまるで本当の恋人のような愛おしむような目で私を見つめる。


顔の表情はとても嬉しそうで穏やかだ。


向けられる笑顔が虚しい。


これが全部演技だなんて。


 どうして好きになってしまったんだろう。どうして彼なんだろう。


 あんな契約、しなければ良かった。


でも、出会わなければ良かったとは思えない。


これからどんなに傷つこうとも、母を助けるためなら仕方ない。


会えば会うほど好きになるとは分かっていても、離れることはできない。


それが私たちとの間に取り決められた契約だから。


 好きな男の偽りの婚約者を演じ続ける。


これが私の運命。


これからが、本当の悲しみの始まりなのだろう。
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