イジワル御曹司と花嫁契約
この人は、私に言わせようとしているのか。


あんな残酷なことを。


自分の手は汚したくないなんて、そんな身勝手なこと許せない。


 彰貴のお父さんは、静かに私を見つめ続けた。


そして、私の意思が固いことを察して、ふーっと長いため息を吐いた。


「別れる気はない、ということかね」


「どうして別れなければいけないんですか?」


 いつかは、こんな日が来ることは分かっていた。


彰貴は東郷財閥の御曹司で、私は高卒の小さな弁当屋に勤める一般人で、二人が結ばれることなんて周囲が許さないことくらい、私にだって容易に想像がついた。


「実は、君のことは二回調べている」


 私の質問には答えずに、唐突に驚くような話を切り出した。


「一度目は、彰貴が大勢の前で君と婚約宣言をした時。

その時の周囲の驚きと困惑ぶりは凄かったが、私は気にも留めていなかった。

どうせ嘘だろうと見抜いていたからね。

現に調べた結果、君たちが出会ったのは、あの日が初めてだった」
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