イジワル御曹司と花嫁契約
どうやら中はスイートルームのようだった。


モダンな雰囲気の豪華なリビングの奥には、広々としたバルコニーがあり海を一望できる。


 あまりにも素敵な部屋の造りにうっとりとしてしまう。


初めて入ったスイートルームに嬉しくて飛びはねてしまいそうだった。


 キョロキョロと忙しなく辺りを見回している私に、彼はまったく関心を向けることなく、大きなクローゼットからクリーニング袋に掛けられた白シャツを取り出した。


 おもむろにジャケットを脱ぎ出した彼に慌てて、そういえば私も汚れていたことを思い出し、「洗面所借ります!」と言って逃げるようにその場から立ち去った。


 バスルームと対になっている洗面所は、とても清潔で綺麗だった。


手垢一つない大きな三面鏡に、蛇口が金ぴかで細部まで贅を尽くした造りになっている。


 感嘆のため息を漏らし、鏡に映る自分に目をやると、白いカーディガンの腕の部分にべっとりとバジルの染みができていた。


「あっちゃー」


 独り言を零しながらカーディガンを脱ぎ、金ぴかの蛇口を捻る。
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