イジワル御曹司と花嫁契約
「お風呂終わって暇してたとこ。彰貴は?」


「俺は今仕事が終わったところだ。

さっき病院から連絡が来て、手配は全て終わったそうだ。

もういつ転院してきてもいいぞ」


「そ、そうなんだ……」


 歯切れの悪い返しに、彰貴は怪しむように声を落として言った。


「……もしかして、まだ何も言ってないのか?」


 図星だった。


きまりが悪くなった私は、逆切れするように声を荒げる。


「だ、だって、何て言えばいいの!? 

手術するお金なんてうちにはないこと知ってるし、どこから借りたんだって問い詰められるに決まってる!」


「本当のことを言えばいいだろうが」


 呆れるような冷静な声。


「言えるわけないでしょ!婚約者のふりをすることになっただなんて……。

お母さんには心穏やかに手術日を迎えてほしいの。

余計な心配させたくない」


 彰貴はしばらく無言になり、なにやら考えているようだった。


そして、考えがまとまったのか、再び声が聞こえ出した。


「それじゃあ、婚約者のふりじゃなくて、婚約することになったと言えばいい。それなら母親も喜ぶだろ」


「ちょっと待って。お母さんも騙すってこと?」
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