イジワル御曹司と花嫁契約
と頭を下げると、萩原さんはいつもの豪快な笑いを見せて、


「いいのよ。うちで寝てばっかりいたんだから。ちょうど良かったわ」


 と言った。


萩原さんのご主人もとてもいい人で、寡黙だけど丁寧な仕事をしてくれて助かっている。


母が退院してからも二人で働いてほしいなと思っているくらいだ。


きっと今まで以上に店が明るくなって繁盛するだろう。


 でも、一体いつになったら母は退院できるのだろう……。


 客足が途絶え、夕焼けも沈みかけた頃、ふと思い出したように時計を見上げた。


短針はもうすぐ六を示そうとしている。


 いつもなら母のお見舞いに行くために後は萩原さんに任せて店を出る。


でも今日はパーティーに行く日だから慌てて店を出なくてもいい。


出港の時間までまだ十分時間があった。


 時計を見つめている私に気が付いた萩原さんは、大きな声で言った。


「そうだ、今日はパーテーの日だったね!後の片付けはいいから、早く行っておいで」


 萩原さんは何度指摘しても、パーティーをパーテーと言う。


その発音が面白いから、今はもう指摘さえもしない。
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