壊れるほど抱きしめて
一度でいい、私の名前を呼んで



真鍋さんと話をした日から一週間が経った。


週末だけでも彼と一緒に食事をしたかったけど、あれから坂木くんの家には行っていない。


坂木くんはあの日から仕事で私と目が合ってもすぐに逸らすし、アパートでたまたま会った時に話しかけたら『しばらく俺に話しかけないでくれ』と言われた。


苦しんでいる彼の側に居たい気持をグッと堪えた。


それに私には坂木くんの為にやるべき事があるからだ。
坂木くんからはきっと『余計な事をするな』って言われてしまいそうだけど、坂木くんが前に進むためにも私は実行するつもりだ。


それはーーー


かおりさんの実家に行く事。
見ず知らずの私が行くのは間違ってるかもしれないけど、ちゃんとかおりさんの両親に了解をへてお墓参りに坂木くんを行かせてあげたい。
きっとかおりさんの両親も娘を失った事で、坂木くんのせいにしなければ、娘を失った悲しみをどこにぶつけていいかわからなかったかもしれないし、あれから時間も経っているし、話せばきっと分かってくれるはずだ。


真鍋さんから昨日に連絡が来て、かおりさんの両親が住んでいる住所を聞いた。


今週は早出で、仕事が終わった私は一度アパートに戻り、シャワーを浴びて着替えた後に、かおりさんの両親の家へと向かった。


途中で花屋に寄り、お花を買った。


そして家に着くと私はインターフォンを鳴らす。


「はーい」


そう言って扉を開けたのは、かおりさんの母親だった。


「こんばんは、初めまして。あの、かおりさんに手を合せたくてお伺いしたのですがよろしいでしょうか?」


「かおりに?まぁ…わざわざありがとうございます。あの子も喜ぶわ、さぁ上がって下さい」


かおりさんの友達だと思われてる私。
仏壇に手を合わせる事を喜んでくれているようにも思える。
罪悪感はあるけど、坂木くんが愛した人……今でも愛している人に私も会いたかったからだ。


私は中へと通されて、仏壇のある座敷へと案内された。




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