イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
真下さんが言うように夫婦喧嘩でもして勢い余って家を飛び出し、数日間だけでも身を置ける転居先を探してる、とかかもしれない。
事情はわからないけれど。


『独身でも責任感が強い人もいれば、既婚者なのに信用ならない奴もいますがネ。』


そんな都市伝説に、辟易としているようにも見えた。結婚したり、別居したりするとまた、社内での評価が変わったりするのかな。

他に、どんな一面があるのかなって、ちょっとだけ気になっちゃったけど。
まさか、“夫”としての顔があったなんて。

思いもしなかった。



就業時間が終わり、社員たちが一人、また一人と帰宅していき、気が付くと総務部のフロアはいつの間にか暗くなっていた。
すっかりおいてけぼりをくらった私も会社を出て、遊歩道を歩く。

暮れた空は薄曇りで、月が隠れてしまっている。外灯が灰色の空に、ぼわんと滲んだ。溶けかけのプリンみたいだったが、美味しそうとは思えない。

噴水の前に差し掛かり、私はキョロキョロと付近を見渡した。すると、街路樹の裏に人影が見える。


「す……、」


鈴木さん…?
と思ったけど、違った。

木陰を歩いていた人は、足を止めてそちらを注視する私を知り合いかと思ったのか、顔を半分くらい出してこちらを窺っている。
男性だけど、鈴木さんとは顔も髪型も違った。正確には髪型まではわからない。ニット帽を目深に被っている。

もしも私が他人を鈴木さんと間違えて声を掛けようとしたことが知れたら、またなにか、君はそそっかしいとか言って、悪態を吐かれそう。
これは絶対にバレないようにしよう、と思い、再び歩き出したとき。
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