イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
後ろの方で近付いてくる足音がした。噴水の横を通り過ぎながら少しだけ振り向いてみると、さっき木陰にいた男が私の背後を歩いている。

足取りが重い私はゆっくりと歩いていた。すぐに追い越せる速度のはずなのに、真後ろの相手は一向に、私の先を越す気配がない。

むしろ、一定の距離を保って。
まるで__…。


「…っ」


早歩きの速度から、徐々に小走りになる。すると相手も私と同じ歩幅で、足音を刻んだ。
ついてくる、と認識してしまったらもう、鼓動は速くなるばかり。

怖くて振り向けない。
迫ってくる相手の足音が、焦燥を促す。


「はあ、っは……!」


もう少し頑張れば、外灯が乏しい暗い道が終わり、駅も近くなって明るくなる。アパートまであと少しだ。
もはや全力疾走といってもいいくらいの加減で、スピードを上げたとき。


「__きゃ!?」


突然強い力で手首を捕まれ、私は前のめりになりながら強制的に足を止めた。


「は、離……っ」


声が上手く出ない。
身体中の力を振り絞り、手首を振り払うが、逆に相手の握力を強める結果になってしまった。


「なに嫌がってんだよ、先に笑い掛けてきたのはそっちだろ?こっちに来いよ!楽しませてやるぜ」


笑いを織り混ぜてそう言った相手に、「ち、違っ!」なんとか否定しようとした、その瞬間。

もう一人の足音と、


「__おい、」


暗闇に低く通る男性の声が、耳に届いた。


「離せよ。」
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