うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 自分が子どもの頃の母親とか、もっと年だった気がしたのだが、よく考えたら、年齢的には、かなり若い。

 子どもから見たら、そう見えただけだったのかな、と認識を改める。

 子どもたちが周りに群れていたこともあり、そのママさんにも、やはり、誰かのママだと思われたようで、笑顔で挨拶してくれたあと、手を引く子どもに、
「今の誰のママだっけ?」
と訊いていた。

 ……もう私もそんな年になったのね、と思っていると、子どもたちが、グラウンドを振り返り、

「あ、イケメン先生だー」
と言った。

 未里たちが聞いたら、即座に振り返りそうなセリフだな、と思いながらも、ママと呼ばれた衝撃に、まだ、ぼんやりしていた。

「神田先生、さようならー」

「はい。
 さようなら」
と夕べ聞いた声がする。

 きゃっきゃ、と子どもたちは帰っていってしまった。

 振り向くと、神田が笑ってこちらを見ていた。

「どうしたの? 相楽さん。
 ぼんやりして。

 誰かのお母さんと間違われて、驚いた?」
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