うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜




 学校だ。
 懐かしいっ。

 瑞季は神田の勤めている小学校の門の前に居た。

 そこは自分たちの小学校ではなく、見たこともない他所の小学校なのだが、やはり、学校というだけで、懐かしい感じがする。

 夕暮れの校庭では、遊んでいる子どもたちが居て、先生に、教育サイレンが鳴ったからもう帰れと叱られていた。

 あったな、教育サイレン、と笑ったあとで、このまま入っていって、不審者で捕まえられないかな、とふと思った。

 だが、さよーならー、と先生に挨拶して帰っていく、色とりどりのランドセルの女の子たちが、横を通り、
「こんにちは」
と挨拶してくれたあとで、

「誰のママ?」
と訊いてきた。

 ぐはっ。
 ママに見えるのかっ。

 もうそんな年になったのか、と衝撃を受けたが、近くに車が止まり、若くて可愛いママさんが、その中のひとりを迎えに来たのを見て、

 よ……よかった。
 小学生のママってあのくらいな感じなのか、と思った。
< 36 / 328 >

この作品をシェア

pagetop