最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 ああ、私、この場にひれ伏してしまいたい。
 だってこれほど美しい存在を前にして、頭を上げているなんて非礼は、人間として決して許されることでは……。

「キアラ!? あなたはキアラですね!?」
「……え?」

 目の前の美の世界に、陶酔しきっていた私は、突然自分の名前を呼ばれて我に返った。

「ああ、会いたかった! キアラよー!」

『金』の方が喜色満面、白い衣装を翻しながら私に向かってダダダーッと駆け寄ってくる。

「キアラ! キアラ! キア…… ぶっ!」

 転がるような勢いで突っ込んできた『金』が、自分の衣装の裾に足を引っかけて、前のめりにすっ転んだ。

 両腕をビーンと前に伸ばし、無防備な顔面を土に密着させた体勢で、ズズーッと気前よく滑って止まる。

「あらあら、モネグロスったら」

 微笑む水の精霊アグア様と、うつ伏せ状態のままピクリとも動かない善神モネグロス様を前にして、私は石像のように固まってしまった。

 れ、礼を尽くしてひれ伏すつもりだったのに、もっと低姿勢な体勢を神様にとられてしまってどうしよう……。
< 65 / 162 >

この作品をシェア

pagetop