乙女は白馬に乗った王子を待っている

「だから、もしもやりたいことがあるなら、どんどんやってくれよ。何か関係のある就職先を紹介できるかもしれないしさ。」

「社長、私にここの会社を辞めて欲しいんですか?」

高橋は、ゆり子を見るとふっと笑った。

「違うよ。権藤は、一人で切り盛りしてくれて、すごく助かっている。
 もし、辞められたら、オレとしてはこの上ない痛手だよ。」

「じゃあ、どうしてそんなこと言うんですか?」

「権藤にも、一生続けたい、って思える仕事について欲しいと思ってるからだよ。」

真面目くさって答える高橋をゆり子はまじまじと見つめた。

「何ですか、それ。」

「だってさ、もし、死ぬまで仕事をしなくちゃいけないなら、やりたいことをやった方がいいだろ。」

「何ですか、私、死ぬまで仕事をするんですか?」

「しないの?」

逆に聞かれてゆり子は戸惑った。
いや、この調子で、定年まできゅうきゅういいながら、毎日貯金だけ必死にして生きて行くのか!?

「嫌ですよ!」

それはほとんど悲痛な叫び声であった。


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