乙女は白馬に乗った王子を待っている
白馬の王子様だって愛が欲しいのかもしれない

今日はいつもの月曜日とまるで違う。

ベッドからがばっと跳ね起きると、ラジオのスイッチを入れて、コーヒーを作った。
食パンをトースターにつっこんで、ハムエッグを作る。

ラジオから流れてくる軽快な曲に合わせて、口からは自然とハミングがこぼれていた。

急いで支度を整えて足取りも軽く仕事場へ向かう。
街も人も風も心地よかった。

笑顔で挨拶をしながら事務所に入ると、高橋が眩しそうな顔をした。

「今日はずい分と、……ご機嫌だねぇ。」

「そうですか?」

言いながらも、ゆり子はぽっと顔を赤くした。高橋ははっとした顔をする。

「そっかー、権藤にもついに男が出来たのか。めでたい、めでたい。」

「わかります?」

ゆり子は機嫌良く答えた。

ああ、このおおらかな返し。
恋人がいるというのは、人生にこうも余裕をもたらすものなのか。
昨日までの焦りがうそのに、寛大な気持ちになれた。

嬉しそうなゆり子の顔を見て高橋もにっこりと微笑む。

「じゃ、今週も一週間よろしく頼みます。あと、はい、これ。」

高橋が手渡したのは、給与の明細だった。

明細に目を通すと、驚いたことに、給与こそ低かったものの、交通費はもちろん、残業代もきっちり支払われていたし、福利厚生の類いもゆり子の想像していたものよりも、ずっと充実していた。

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