乙女は白馬に乗った王子を待っている
リア充女子の憂鬱

お昼前に、高橋がさやかを迎えにくることになっている。

ゆり子はそれを見るのが嫌で、翔太を誘って早々に出かけた。
サッカーの練習がしたいという翔太に付き合って、コンビニでお弁当を買って近くの公園に出かける。

ボールを蹴りたくなるといつも行くというその公園には、土曜日の朝だというのに、何人かの熱心なサッカー野郎がやってきているようで、翔太は早速仲間を見つけてボールを蹴っていた。

ゆり子はベンチに座ってぼんやりそれを見つめる。

これよ、これが、リア充女子の王道じゃないの?

ボールを蹴って体を動かすカレを眺める。
時おり笑い声が聞こえてくる。ボールと戯れている翔太は、文句なしに楽しそうだった。

ゆり子はため息をついた。

気になってしかたがない……。
心の片隅のどこかに溶けることのない鉛のかたまりがどすんと居座っているような、そんな気分だった。

翔太がゆり子に向かって走ってくる。ゆり子は手を大きく振って翔太がやってくるのを眺めた。


< 169 / 212 >

この作品をシェア

pagetop