乙女は白馬に乗った王子を待っている
「それは権藤の研修が下手だということだからな。」
朝言われた高橋の言葉がよみがえってきた。
よし、よく分からないけど(そもそも何でこういうことをしているんだ?)こうなったら、とにかく何とか研修内容を考えて、恥ずかしくない受け付けを山村さんが出来るようにするしかない!
ゆり子は、それまで何となくイメージしていた受付嬢の仕事内容を考えてまとめ、挨拶の仕方とか電話対応のマニュアルなどを作成していった。
夢中で研修の内容を考えていると、あっという間に夕方だった。
まだまだ出来上がりにはほど遠い。
「社長……、終わりませんでした……。」
高橋はゆっくりとゆり子を見つめた。
しばらくそうしてから、ふいににこっと笑った。
「明日は何とかなるか?」
「……多分。」
「じゃあ、今日は帰っていいよ。ご苦労様。
あと、明日の夕方は問い合わせの人も来るんだろう? その対応も考えておいて下さい。
できれば、オレも一緒にいたいんだけど。」
研修に派遣希望者の面接。
もちろん、合間には電話の問い合わせなどもある。なんだか忙しくなりそうだった。
「……わかりました。それから、あの、……社長!」
「……何?」
相づちをうった高橋の声は思いがけず甘くて、その顔も優しげだった。
どくん。
心臓が、一瞬大きく波打った。
「実は……」と、まごつきながら、さやかから頼まれた合コンの件を切り出した。