乙女は白馬に乗った王子を待っている
「見てる〜?」
隣りに住む翔太が、玄関で声をあげながら勝手に入って来た。
ヤッホー。やって来ましたよ〜、極上の日本酒が。
翔太が来るのはいつだって大歓迎だ。
ゆり子は心の中で小躍りした。
翔太が手に携えて来たのは、久保田の大吟醸とコンビニの袋に入ったフィッシュ&ナッツ、さきいか、パックの枝豆とポテトサラダだった。
うーむ、コンビニでのつまみ買いかあ。相変わらず羽振りがいいのう。
ゆり子は、コンビニの袋から透けて見える中身を一瞬のうちに識別した。
翔太は、勝手知ったるゆり子とさやかのキッチンからコップを三つ持ってくると、するりとコタツに入る。
そこには何の違和感もない。
「翔太、有村美香のキスシーン見逃しちゃったよ。」
「マジか!? 美香ちゃんが……キス!? 相手は誰だ?」
「イケメン専務。」
うっとりした声で夢見るように答えたのはさやかだ。はーっと乙女なため息をもらして呟いた。
「いいなあ……、私もあんなキス、されてみたい。こう……、壁をドンっとされて、キャー!」