乙女は白馬に乗った王子を待っている
手早く夕飯を作る。
テレビのスイッチをひねって、買った本をナナメ読みしながらくつろいでいた。

金曜日の合コンにあとは誰を誘おうか……などと考えていると、ピンポーンとチャイムがなる。

この時間なら翔太に違いない。

ゆり子はいそいそした気分で玄関まで出た。

「はーい」

ドアを開けると、案の定、翔太がコンビニの袋を持って立っていた。

「よっ。一杯飲まない?」

「うん。ご飯食べた?残り物で良ければ何か作るよ。」

「サンキュー。実は期待してた。」

こんな遠慮のないやり取りがゆり子はやっぱり嬉しい。自然と顔がほころぶ。

翔太は、手慣れた様子で中に入ってくると、コンビニの袋からビール三本と適当なおつまみを取り出した。

ゆり子は、ちらりとそれを見ながら、キッチンに行って適当に食べるものを作った。

ビールが三本なのは、きっとさやかに会いたかったからに違いない……。

なんだか、期待させてそわそわ待たれるのもイヤだったので、ゆり子は先回りをして翔太に言った。

「さやか、今日は遅くなると思うよ。」

「そっか……、昨日はそんなこと言ってなかったけどな。」

「あ、会ったんだ? 昨日。」

なるべくさりげない会話になるように努めたつもりだが、落胆したような声になってないか気になる。

「うん、一緒に昼メシ食った。」

翔太の返事は屈託がない明るいものだった。


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